イメージイラスト
本日の日替わりランチは、かき揚げを主菜に、小松菜と油揚げのおひたし、きゅうりとタコの酢の物を合わせました。
白ご飯、赤だし、きゅうりのぬか漬けとともにご用意しています。
かき揚げは、かぼちゃ、さつまいも、玉ねぎ、三つ葉、海老、イカ、あさりを合わせ、衣をまとわせて揚げた一品です。
野菜の甘みや香り、魚介のうま味が、揚げ物の中でひとつにまとまります。
小松菜と油揚げのおひたしは、小松菜と油揚げを、だし、醤油、みりん、酒、砂糖で仕立てています。
きゅうりとタコの酢の物は、きゅうり、タコ、わかめを、酢、砂糖、塩、出汁、醤油で合わせました。
揚げ物、おひたし、酢の物と、調理法が変わると、食材の水分、香り、うま味、だしや酢とのなじみ方も変わります。
本日も、かに久の日替わりランチを通して、和食の中の小さな食材学をお楽しみください。
かき揚げ
小松菜と油揚げのおひたし
きゅうりとタコの酢の物
白ご飯
赤だし
きゅうりのぬか漬け
食品成分の数値は、文部科学省「食品成分データベース」を参考にしています。
いずれも可食部100gあたりの値で、実際の一食分の栄養量とは異なります。
| 食材 | 成分表での食品名・条件 | 主な成分例 |
|---|---|---|
| かぼちゃ | 西洋かぼちゃ/果実/生 | 水分76.2g、たんぱく質1.9g、脂質0.3g、炭水化物20.6g、食物繊維総量3.5g、β-カロテン当量2600μg、ビタミンC 43mg |
| さつまいも | さつまいも/塊根/皮なし/生 | 水分65.6g、たんぱく質1.2g、脂質0.2g、炭水化物31.9g、食物繊維総量2.2g、カリウム480mg、ビタミンC 29mg |
| 三つ葉 | 切りみつば/葉/生 | 水分93.8g、たんぱく質1.0g、食物繊維総量2.5g、カリウム640mg、β-カロテン当量730μg |
| 海老 | バナメイえび/養殖/生 | 水分78.6g、たんぱく質19.6g、脂質0.6g、カルシウム68mg、鉄1.4mg |
| イカ | するめいか/胴/皮なし/生 | 水分79.1g、たんぱく質18.6g、脂質0.6g、カリウム340mg、ビタミンB12 4.3μg |
| あさり | あさり/生 | 水分90.3g、たんぱく質5.7g、脂質0.7g、鉄2.2mg、ビタミンB12 44.8μg |
| 小松菜 | こまつな/葉/生 | 水分94.1g、たんぱく質1.5g、食物繊維総量1.9g、カルシウム170mg、β-カロテン当量3100μg、ビタミンC 39mg |
| 油揚げ | 油揚げ/油抜き/生 | 水分56.9g、たんぱく質18.2g、脂質23.4g |
| タコ | まだこ/ゆで | 水分76.2g、たんぱく質21.7g、脂質0.7g、亜鉛1.8mg |
| わかめ | 湯通し塩蔵わかめ/塩抜き/生 | 水分93.3g、たんぱく質1.5g、脂質0.3g |
| きゅうりのぬか漬け | きゅうり/漬物/ぬかみそ漬 | 水分85.6g、たんぱく質1.5g、食物繊維総量1.5g、カリウム610mg、ナトリウム2100mg |
かき揚げには、かぼちゃやさつまいもの炭水化物、玉ねぎや三つ葉の水分と香り、海老・イカ・あさりのたんぱく質やうま味が重なります。
揚げ物にすると、衣の香ばしさが加わり、具材ごとの水分や香りの出方も変わります。
小松菜は水分を多く含み、カルシウムやβ-カロテン、ビタミンCなどを含む野菜です。
油揚げと合わせることで、大豆加工品らしいたんぱく質や脂質、だしのうま味が加わります。
きゅうりとタコの酢の物は、きゅうりの水分、タコのたんぱく質、わかめの海藻らしい口当たりに、酢の酸味が重なる副菜です。
かき揚げで見る、衣の中で重なる水分・でんぷん・魚介のうま味
かき揚げで掘り下げたいのは、衣の中で具材がひとつにまとまる仕組みです。
天ぷらの中でも、かき揚げは少し特別です。
海老や野菜を一つずつ揚げる天ぷらとは違い、細かく切った複数の具材を、衣でつなぎながら揚げます。
つまり、かき揚げは「食材を揚げる料理」であると同時に、「食材同士をまとめる料理」でもあります。
ちなみに「かき揚げ」の名前は、具材を衣ごと「かき混ぜて」揚げることに由来するとされています。
複数の具を寄せ集めてまとめる、というこの料理の成り立ちが、そのまま名前になったような天ぷらです。
今回のかき揚げには、かぼちゃ、さつまいも、玉ねぎ、三つ葉、海老、イカ、あさりを使っています。
この組み合わせを見ると、食材の性格がかなり違うことが分かります。
かぼちゃやさつまいもは、でんぷんや炭水化物を含む食材。
玉ねぎや三つ葉は、水分と香りの印象が強い食材。
海老、イカ、あさりは、魚介らしいたんぱく質やうま味を持つ食材です。
文部科学省「食品成分データベース」によると、「西洋かぼちゃ/果実/生」の可食部100gあたり、水分76.2g、炭水化物20.6g、食物繊維総量3.5gとされています。
「さつまいも/塊根/皮なし/生」では、水分65.6g、炭水化物31.9g、食物繊維総量2.2gとされています。
どちらも水分を含みながら、加熱によってほくっとした印象が出やすい食材です。
この「ほくっとした印象」に関わるのが、でんぷんです。
でんぷんは、水分と熱を受けることで糊化し、食感を作る大きな要素になります。
糊化とは、でんぷんが水分を抱え、加熱によってやわらかく変化することです。
かぼちゃやさつまいもを揚げると、外側には衣の軽さが生まれ、内側ではでんぷんを含む身がやわらかくなります。
同じ油の中に入っていても、衣の表面と具材の中では、起こっている変化が違います。
玉ねぎは、また別の働きをします。
玉ねぎは水分を多く含み、加熱すると辛味の印象がやわらぎ、甘みを感じやすくなります。
かぼちゃやさつまいものほくっとした質感の間に、玉ねぎの水分と甘みが入り込むことで、かき揚げ全体が重くなりすぎず、食感に少しゆるみが出ます。
三つ葉は、量としては大きな食材ではありません。
けれど、香りの面ではとても大切です。
「切りみつば/葉/生」の可食部100gあたり、水分93.8g、カリウム640mg、β-カロテン当量730μgとされています。
実際に使う量は少量ですが、三つ葉は栄養量としてよりも、香りの食材として見ると分かりやすい存在です。
かぼちゃやさつまいもの甘み、玉ねぎの水分、魚介のうま味が重なる中で、三つ葉の青い香りが入ると、全体の印象が少し軽くなります。
香りの強い主役ではなく、かき揚げの中に抜け道を作るような食材です。
ここに海老、イカ、あさりが加わります。
魚介は、野菜とは違う方向からかき揚げに厚みを添えます。
「バナメイえび/養殖/生」は、可食部100gあたり、たんぱく質19.6g、脂質0.6g。
「するめいか/胴/皮なし/生」は、たんぱく質18.6g、脂質0.6g。
「あさり/生」は、たんぱく質5.7g、鉄2.2mg、ビタミンB12 44.8μgとされています。
数値だけを見ると、それぞれかなり違う食材ですが、料理の中では魚介らしいうま味や香りを作る仲間として働きます。
海老は、加熱すると身が締まり、ぷりっとした印象が出やすい食材です。
イカは、火の入り方によって歯ざわりが変わりやすく、加熱しすぎると硬さが出ることがあります。
あさりは、身そのものは小さくても、貝類らしいうま味を持つ食材です。
ここで魚介のうま味について、少し面白い話があります。
海老やイカに含まれるうま味成分はアミノ酸系のグルタミン酸が中心ですが、あさりなどの貝類には、コハク酸という別のうま味成分が多く含まれます。
コハク酸は、貝類のうま味を語るときによく登場する成分で、海老やイカとはまた違う方向のうま味を添えます。
種類の違ううま味が重なることで、かき揚げの魚介らしさに奥行きが出ます。
かき揚げの衣は、具材をただ包むだけではありません。
形も水分量も違う具材を、油の中で一つの塊として保つ役割を持っています。
衣が薄すぎるとばらけやすく、重すぎると具材の個性が隠れてしまいます。
この「つなぐけれど、覆いすぎない」加減が、かき揚げでは大切です。
油の中では、衣の表面から水分が抜けていきます。
水分が抜けることで衣は軽くなり、香ばしさが生まれます。
一方で、内側の具材には熱が入り、かぼちゃやさつまいもはやわらかくなり、玉ねぎは甘みを感じやすくなり、魚介はたんぱく質変性によって食感が変わります。
同じ一つのかき揚げの中で、外側と内側、野菜と魚介が、それぞれ違う変化をしています。
かき揚げが面白いのは、具材が完全に一体化しないところです。
コロッケのように中身をつぶしてまとめるのではなく、食材の形や食感を残したまま、衣でゆるやかにつなぎます。
だから、ひと口ごとに印象が少し変わります。
あるところではさつまいもの甘み、あるところでは玉ねぎの水分、あるところでは海老やイカの歯ざわり。
また別のところでは、三つ葉の香りやあさりのうま味が顔を出します。
天つゆを合わせると、ここにも変化があります。
だし、醤油、みりんの天つゆは、衣に触れることで少しずつしみ込みます。
衣がつゆを受け止めすぎると重くなりますが、ほどよくなじむと、だしのうま味と醤油の塩味、みりんの甘みが、具材の香りをまとめます。
揚げたての香ばしさと、天つゆの水分。
この対比も、かき揚げらしさの一部です。
副菜の小松菜と油揚げのおひたしとは、水分の扱い方がまったく違います。
おひたしは、だしを含ませて、野菜の青みと油揚げのコクを穏やかにまとめる料理です。
一方、かき揚げは、衣の水分を油の中で飛ばしながら、具材をひとつにまとめます。
同じ献立の中でも、水分を含ませる料理と、水分を飛ばす料理が並んでいます。
きゅうりとタコの酢の物も、また違う方向です。
酢の物では、酢の酸味、きゅうりの水分、タコのたんぱく質、わかめの海藻らしい口当たりが重なります。
揚げ物の香ばしさのあとに、酢の物の酸味が入ると、口の中の印象が切り替わります。
こうして見ると、かき揚げは献立の中心で、周りの副菜が水分や酸味、だしで流れを作っていることが分かります。
栄養学の面では、かき揚げには複数の食材が入るため、一つの成分だけでは語りにくい料理です。
かぼちゃやさつまいもは炭水化物や食物繊維を含み、海老やイカはたんぱく質を含み、あさりは鉄やビタミンB12を含みます。
三つ葉や玉ねぎは、香りや水分の面で料理の印象を支えます。
それぞれの食材を別々に見るだけでなく、衣の中でどう重なるかを見ると、かき揚げの見え方が少し変わります。
かき揚げは、具材の寄せ集めのようでいて、実はかなり繊細な料理です。
水分の多いもの、でんぷんを含むもの、たんぱく質を含むもの、香りの強いもの。
それらを一つの衣でつなぎ、油の中で形にする。
そこには、揚げ物らしい力強さと、食材ごとの違いを残す細やかさが同時にあります。
今日のかき揚げを、そんな衣の働き、野菜の水分とでんぷん、魚介のうま味、三つ葉の香りの重なりとともに楽しんでいただければと思います。
【用語メモ】
・でんぷん:かぼちゃ、さつまいも、米、小麦などに含まれる炭水化物の一種です。加熱によって食感が変わります。
・糊化:でんぷんが水分を抱え、加熱によってやわらかく変化することです。
・たんぱく質変性:熱などによって、たんぱく質の形や性質が変わることです。魚介の身の食感が変わるときにも関わります。
・グルタミン酸、コハク酸:うま味に関わる成分です。グルタミン酸はアミノ酸系、コハク酸は貝類に多いうま味成分として知られています。

