| 食材 | 成分・栄養素の手がかり |
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| たまご | たんぱく質、ビタミンB群、脂質を含みます |
| ずわいがに | たんぱく質、うま味に関わるアミノ酸を含みます |
| 春雨 | 主にでんぷん由来の炭水化物を含みます |
| 豚挽肉 | たんぱく質、ビタミンB1を含みます |
| もやし・人参・真竹 | 食物繊維やビタミン類を含みます |
かにや卵はたんぱく質に関わる食材として知られ、野菜類はビタミンやミネラルの供給源のひとつです。揚げ物には油が加わるため、赤だしや高菜漬けが全体の味の輪郭を軽やかに整えてくれます。
天津飯の卵とずわいがに、うま味成分が二重に重なる話
天津飯の主役は、やっぱり卵です。卵に含まれるたんぱく質は、加熱されると形が変わってふんわりと固まります。これがたんぱく質変性。生のときはくるくると丸まっていたたんぱく質が、熱を受けてほどけ、隣同士でつながり合って網目のような構造を作る。あのやわらかな半熟の食感は、まさにその途中の状態を狙って作られています。火を入れすぎると網目が締まりすぎて、ぎゅっと硬くなるので、加熱のさじ加減がものを言うわけです。
そこへ合わせるのが、ずわいがにのほぐし身。かにのうま味の背景には、グルタミン酸やグリシン、アルギニンといったアミノ酸があります。特にかに特有の甘みには、グリシンというアミノ酸が一役買っていると言われています。おもしろいのは、卵にもうま味成分のグルタミン酸が含まれること。つまり天津飯は、卵とかに、それぞれの方向からうま味が重なる料理なんですね。あんに使う醤油もグルタミン酸を含むので、味の層はさらに厚みを増します。
かにのうま味を語るとき欠かせないのが「イノシン酸」といううま味成分ですが、実はかにのほぐし身は、水揚げ後の時間の経過とともにこのイノシン酸が変化していきます。だからかに料理は鮮度と扱いが大切だと言われるわけです。そして、グルタミン酸(主に植物や卵、昆布側)とイノシン酸(主に魚介や肉側)が出会うと、うま味が単純な足し算以上に強く感じられる「うま味の相乗効果」が起こります。天津飯は、卵の力とかにの力が手を組んで、口の中でこの相乗効果を静かに起こしているわけです。地味な組み合わせに見えて、味覚生理学的にはなかなか贅沢な設計。
そしてこの天津飯、名前に「天津」とついているのに、中国の天津には基本的に存在しない料理だとよく言われます。日本で生まれたご当地中華、いわば和製中華の代表格。名付けのルーツには諸説あって、天津産の米を使ったからとか、天津の芙蓉蟹にちなんだとか、はっきりしないまま今日まで愛されています。故郷に自分の名前の料理がない、というちょっと切ない立場ながら、日本の食卓ではすっかり主役。名前より中身で勝負している、実に立派なやつです。
あんのとろみを担うでんぷんは、加熱されて水を抱え込みながら糊化し、あの艶とまとまりを作ります。この糊化したあんが卵とごはんの間をつなぎ、うま味を全体に運ぶ役割を果たしています。卵、かに、あん。それぞれの食材の性質が静かに噛み合って、一皿の表情ができあがっているのです。
【用語メモ】
・たんぱく質変性:熱などによって、たんぱく質の形や性質が変わること。半熟卵の食感もこの途中の状態。
・うま味の相乗効果:グルタミン酸とイノシン酸が合わさると、うま味を強く感じる現象。
・糊化:でんぷんが水と熱で膨らみ、とろみや粘りが生まれる変化。あんのとろみのもと。