鉄火丼
わかめとオクラの酢の物
とり天
赤だし
きゅうりのぬか漬け
オクラとわかめの酢の物で見る、ネバネバの正体と切り方の妙
オクラを切ると、あの独特のとろみが糸を引きます。
このとろみの正体は、ペクチンをはじめとする水溶性食物繊維です。
水になじみやすく、水分を抱え込む性質を持つため、包丁を入れたそばからとろりと広がります。
スポンジが水を吸うのに近い働きが、切った断面で一気に起こっているわけです。
このネバネバ、切り方ひとつで表情が変わります。
細かく刻むほど断面が増え、成分が外に出やすくなって、とろみが強く前に出ます。
逆に大きめに切ると、みずみずしくシャキッとした歯ざわりが立ちます。
今日の酢の物では、その中間くらいを狙い、とろみと歯ごたえのバランスを取っています。
オクラの断面がきれいな星形になるのは、さやの中が「部屋」に仕切られているからです。
この部屋のもとになる部分を心皮と呼び、オクラでは5つ前後に分かれています。
星の角の数は、いわばオクラの設計図で決まっていて、品種によっては六角形や、まれに丸みを帯びたものもあります。
ちなみにオクラは成長がとても速く、収穫が一日遅れるだけで大きく硬くなります。
星形をながめて感心している間にも、どんどん育ってしまう、なかなかせっかちな野菜です。
酢の物にするのは、味だけの理由ではありません。
酢の酸味は、オクラやわかめのとろみを程よく引き締め、ぼやけがちな輪郭を整えてくれます。
そこへ胡麻の香ばしさが加わると、さっぱりの中に厚みが生まれます。
ネバネバ、酸味、香り。
この三役が、夏の一皿の背景を静かに支えています。
わかめのとろみは、オクラとは出どころが違います。
海藻ならではのぬめりや食物繊維によるもので、同じ「ネバネバ」でも成分の由来が別なのです。
由来の違うとろみが二つ重なることで、口の中での余韻が少し長くなります。
同じネバネバでも出どころが違うと知ると、ちょっと食べ比べてみたくなります。
【用語メモ】
・水溶性食物繊維:水になじみやすいタイプの食物繊維です。とろみやなめらかさのもとになることがあります。
・ペクチン:植物に含まれる多糖類です。水分を抱えてとろみを作る性質があります。
・心皮:果実や実の内部を仕切る「部屋」のもとになる部分です。オクラの星形は、この数で決まります。