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本日の日替わりランチは、回鍋肉を主菜に、焼き茄子の香味だれ、温泉卵のきのこあんを合わせました。
白ご飯、赤だし、高菜漬けとともにご用意しています。
回鍋肉は、豚肉、キャベツ、ピーマン、にんじんを炒め、八丁味噌、砂糖、みりん、酒、豆板醤で仕立てた一品です。
味噌の深い香りに、野菜の水分と炒めた時の香りが重なります。
焼き茄子の香味だれは、茄子に生姜、大葉、白ネギを合わせ、醤油、砂糖、酢、生姜、ごま油で仕立てています。
温泉卵のきのこあんは、卵に、えのき、しいたけ、しめじ、人参を合わせ、だし、しょうゆ、みりんのあんでまとめました。
炒め物、焼き物、あんかけと、調理法が変わると、食材の水分、香り、うま味、口当たりの出方も変わります。
本日も、かに久の日替わりランチを通して、和食の中の小さな食材学をお楽しみください。
回鍋肉
焼き茄子の香味だれ
温泉卵のきのこあん
白ご飯
赤だし
高菜漬け
食品成分の数値は、文部科学省「食品成分データベース」を参考にしています。
いずれも可食部100gあたりの値で、実際の一食分の栄養量とは異なります。
豚肉は部位によって成分差が大きいため、表では参考として「ぶた/大型種肉/ばら/脂身つき/生」の数値を掲載しています。
| 食材 | 成分表での食品名・条件 | 主な成分例 |
|---|---|---|
| 豚肉 | ぶた/大型種肉/ばら/脂身つき/生 | 水分49.4g、たんぱく質14.4g、脂質35.4g、カリウム240mg |
| 八丁味噌の参考 | 豆みそ | 水分44.9g、たんぱく質17.2g、脂質10.5g、食物繊維総量6.5g |
| キャベツ | キャベツ/結球葉/生 | 水分92.9g、たんぱく質1.2g、食物繊維総量1.8g、ビタミンC 38mg |
| 青ピーマン | 青ピーマン/果実/生 | 水分93.4g、食物繊維総量2.3g、β-カロテン当量400μg、ビタミンC 76mg |
| 茄子 | なす/果実/生 | 食物繊維総量2.2g、カリウム220mg |
| 卵 | 鶏卵/全卵/生 | 水分75.0g、たんぱく質12.2g、脂質10.2g、ビタミンD 3.8μg |
| ぶなしめじ | ぶなしめじ/生 | 食物繊維総量3.0g、カリウム370mg、ビタミンD 0.5μg |
| 生しいたけ | 生しいたけ/菌床栽培/生 | 水分89.6g、たんぱく質3.1g、食物繊維総量4.9g、カリウム290mg |
豚肉は、たんぱく質と脂質を含む食材です。
回鍋肉にすると、肉の脂質、味噌のうま味、野菜の水分が炒め物の中で重なります。
キャベツやピーマンは水分を多く含む野菜です。
炒めることでかさが落ち、味噌だれや豚肉の脂となじみやすくなります。
卵はたんぱく質と脂質を含む食材です。
温泉卵にすると、白身と黄身のやわらかな口当たりに、きのこあんのだしの香りが添わります。
回鍋肉で見る、八丁味噌のうま味と炒め物の香り
回鍋肉で掘り下げたいのは、八丁味噌のうま味と、炒め物の中で起こる香りの重なりです。
回鍋肉は、豚肉と野菜を炒め、味噌を中心にした甘辛い味でまとめる料理です。
今回の味付けには、八丁味噌、砂糖、みりん、酒、豆板醤を使っています。
豚肉の脂、キャベツやピーマンの水分、味噌の濃い香り、豆板醤の辛味。
それぞれが鍋の中で短い時間に近づき、白ご飯に合う輪郭を作っていきます。
八丁味噌は、豆みそとして扱われる味噌です。
米みそや麦みそのように米麹や麦麹を使う味噌とは違い、大豆を中心に仕込まれる味噌として知られています。
「八丁」という名前は、愛知県岡崎の八丁村(現在の岡崎市八帖町)に由来するとされ、岡崎城から八丁(およそ870メートル)離れた地で作られてきたことが、その名の由来と言われています。
色が濃く、香りにも厚みがあり、甘さだけでなく、渋みや酸味に近い印象を持つことがあります。
文部科学省「食品成分データベース」によると、「豆みそ」の可食部100gあたり、水分44.9g、たんぱく質17.2g、脂質10.5g、食物繊維総量6.5gとされています。
調味料なので一食で使う量は限られますが、味噌を成分から眺めると、大豆由来のたんぱく質や脂質を背景に持つ調味料だと分かります。
味噌の面白さは、単に塩味をつけるだけではないところにあります。
大豆を発酵、熟成させる過程で、たんぱく質は少しずつ分解され、グルタミン酸などのアミノ酸が生まれます。
グルタミン酸は、昆布のうま味成分としても知られるアミノ酸です。
このうま味が、炒め物の中で豚肉や野菜と出会うと、ただ濃いだけではない、奥行きのある味になります。
回鍋肉では、八丁味噌に砂糖、みりん、酒が加わります。
砂糖とみりんは甘みを添え、味噌の塩味や渋みをやわらげます。
酒は香りをまとめ、炒めた豚肉や野菜の間をつなぎます。
豆板醤は辛味だけでなく、発酵調味料らしい香りの層を加えます。
ここで面白いのは、回鍋肉が発酵調味料を二つ重ねている点です。
八丁味噌は大豆を発酵させた豆みそ、豆板醤はそら豆を発酵させた調味料です。
どちらも豆を発酵させて作るという共通点を持ちながら、味噌はうま味と甘みの方向を、豆板醤は辛味と香りの方向を担います。
発酵から生まれた二つの個性が重なることで、回鍋肉の甘辛さに、単純な味付けでは出ない奥行きが生まれます。
ここで大切になるのが、炒め物という調理法です。
煮物のように時間をかけて味を含ませるのではなく、強めの熱で一気に食材を動かしながら火を入れます。
そのため、豚肉の脂がゆるみ、野菜の表面に熱が入り、味噌だれが短時間で全体に絡んでいきます。
キャベツは水分を多く含む野菜です。
「キャベツ/結球葉/生」の可食部100gあたり、水分92.9g、食物繊維総量1.8gとされています。
生のままではふわっと軽い野菜ですが、炒めるとかさが落ち、甘みを感じやすくなります。
この水分が、味噌だれを少しゆるめ、豚肉の脂と一緒に鍋の中でなじんでいきます。
ピーマンも、回鍋肉の中では大切な脇役です。
「青ピーマン/果実/生」では、可食部100gあたり水分93.4g、食物繊維総量2.3g、β-カロテン当量400μg、ビタミンC 76mgとされています。
ピーマンは青い香りと軽い苦みを持つ野菜です。
味噌だれの甘辛さの中に入ると、全体を重くしすぎず、香りの向きを少し変えてくれます。
にんじんは、色と甘みで料理に表情を添えます。
キャベツの淡い色、ピーマンの緑、にんじんの橙色。
回鍋肉は味噌色にまとまりやすい料理ですが、野菜の色が入ることで、見た目にも食材の存在が見えやすくなります。
にんじんに含まれるβ-カロテンは、体内で必要に応じてビタミンAに変わる色素成分です。
栄養の話だけでなく、料理の彩りを作る成分として見ても面白い存在です。
豚肉の脂質も、回鍋肉では重要です。
味噌だれは水分を含む調味料ですが、豚肉から出る脂が加わることで、味に丸みが出ます。
水分だけの味は、さらっと流れやすくなります。
そこに脂質が入ると、香りや味の余韻が少し残りやすくなり、味噌の濃い香りも野菜にまといやすくなります。
この料理では、味噌と脂が別々に存在しているわけではありません。
八丁味噌のうま味、砂糖とみりんの甘み、豆板醤の辛味、豚肉の脂、野菜の水分。
それぞれが炒めることで混ざり合い、甘辛さの中に香りの層を作ります。
回鍋肉の味が平たくならないのは、調味料だけでなく、食材の水分と脂質が同時に働いているからです。
味噌を使った炒め物で気をつけたいのが、焦げつきやすさです。
味噌に含まれるアミノ酸や糖、そこへ加わる砂糖やみりんの糖分が、加熱されることでメイラード反応を起こし、香ばしさを生みます。
味噌炒め特有のあの香ばしい香りは、この反応によるものです。
一方で、火が強すぎたり鍋肌に長く当たりすぎたりすると、香ばしさを通り越して苦味が前に出ることがあります。
回鍋肉では、この香ばしさと焦げの間の小さな幅を見ながら、味噌だれを野菜と肉に絡めていくことになります。
八丁味噌のような濃い味噌は、少量でも料理の印象を大きく変えます。
そのままでは力強い味ですが、砂糖やみりん、酒、野菜の水分、豚肉の脂と合わさることで、角が少しやわらぎます。
濃いものを濃いまま出すのではなく、食材の水分や脂質の中にほどいていく。
そこに、味噌炒めの面白さがあります。
栄養学の面から見ると、豆みそは大豆由来のたんぱく質や脂質を背景に持つ調味料です。
豚肉はたんぱく質と脂質を含み、キャベツやピーマンは水分や食物繊維、ビタミン類を含みます。
それぞれの食材を別々に見るだけでなく、炒め物の中でどう重なるかを見ていくと、回鍋肉という料理の見え方が少し変わります。
回鍋肉は、強い味の料理に見えます。
けれど、その中身を分けて眺めると、味噌の熟成、豚肉の脂質、野菜の水分、ピーマンの青い香り、豆板醤の辛味が、それぞれ違う仕事をしています。
短い時間で炒め合わせる料理だからこそ、その変化は鍋の中で一気に起こります。
今日の回鍋肉を、そんな八丁味噌のうま味、豚肉の脂、野菜の水分と香りの重なりとともに楽しんでいただければと思います。
【用語メモ】
・豆みそ:大豆を中心に仕込む味噌の一種です。八丁味噌も豆みそとして扱われます。
・アミノ酸:たんぱく質を形づくる小さな単位です。グルタミン酸などは、うま味に関わる成分として知られています。
・メイラード反応:糖とアミノ酸が加熱によって反応し、焼き色や香ばしい香りを生む反応です。味噌炒めの香ばしさにも関わります。
・脂質:水に溶けにくく、油になじみやすい成分の総称です。豚肉の口当たりや味噌だれの余韻にも関わります。
・β-カロテン:緑黄色野菜に含まれる色素成分のひとつで、体内で必要に応じてビタミンAに変わります。にんじんやピーマンの色にも関わります。

