赤魚の野菜あんかけ
蓮根とごぼうの金平
イカとネギのぬた
白ご飯
赤だし
高菜漬け
| 食材 | 成分・栄養素の手がかり |
|---|
| 赤魚(白身魚) | たんぱく質 身体づくりに関わる栄養素として知られています。脂質は比較的控えめです。 |
| きのこ類(椎茸・えのき・しめじ) | 食物繊維、ビタミンD きのこはビタミンDを含む食材として知られています。 |
| れんこん・ごぼう | 食物繊維 歯ざわりのもととなる不溶性の食物繊維を含みます。 |
| いか | たんぱく質、タウリン いかはタウリンを含む食材として知られています。 |
| ごま | 脂質、ミネラル 香りのもとになる成分とともに、脂質を含みます。 |
※成分の一般的な説明です。含有量は食材の状態や調理により変わります。
赤魚の野菜あんかけに集まる、きのこの香りとうま味の秘密
今日の主役は赤魚ですが、あんの中でひそかに存在感を放っているのが、椎茸・えのき・しめじというきのこの三兄弟です。せっかくなので、このきのこたちの「うま味」の話を掘ってみます。
きのこのうま味の中心にいるのが、グアニル酸という成分です。昆布のグルタミン酸、かつお節のイノシン酸と並ぶ、いわゆるうま味成分の一角なのですが、面白いのはグアニル酸が「生のきのこにはあまり含まれていない」という点。実はきのこの細胞の中には、うま味のもとになる核酸と、それを分解する酵素が別々に控えていて、きのこを刻んだり加熱したりして細胞が壊れると、酵素が働いてグアニル酸が一気に増えていきます。つまり、きのこは調理の過程でうま味を作り上げていく食材なんですね。あんかけのようにじっくり火を通す料理は、この変化とよく噛み合っています。
この酵素、実は加熱の「速度」で仕事量が変わります。ゆっくり温度を上げていくと、グアニル酸を増やす酵素がしっかり働く温度帯を長くくぐる一方、逆にグアニル酸を分解してしまう別の酵素も存在します。だし取りや加熱の理屈を突き詰めると、「きのこは水から入れる派」「いや、ある程度熱をかけてから派」といった議論が生まれるのは、この二つの酵素のせめぎ合いが背景にあります。台所で起きているのは、地味ながらなかなかスリリングな酵素バトルというわけです。
うま味成分は組み合わせると、単独のときより強く感じられる「うま味の相乗効果」が知られています。今日のあんは、だし(グルタミン酸・イノシン酸系)に、きのこのグアニル酸が合流する構図。数字だけ見ると、グルタミン酸とグアニル酸を合わせると、うま味の強さが単純な足し算をはるかに超えることが古くから報告されています。きのこ三兄弟は、控えめな顔をして実はあんの底力を何倍にも底上げしている、縁の下の力持ちなのです。
ビタミンの面から眺めると、きのこはビタミンDを含む食材として知られている点も見逃せません。ビタミンDは日光を浴びることでも作られる成分ですが、干し椎茸のように日に当てて乾かすと、この成分が増える傾向があると言われています。生のまま使うか、乾かしてから戻すかで、香りだけでなく成分の表情まで変わってくるのが、きのこの奥深いところです。
最後は味の話に着地させましょう。あんの中でとろみをまとったきのこは、うま味と香りを汁ごと閉じ込めて、揚げた赤魚のさっぱりした白身に寄り添います。低脂質な白身魚に、きのことだしのうま味が重なる——今日の一皿は、そんな組み立てで作られています。
【用語メモ】
・グアニル酸:きのこ類に多いうま味成分。細胞が壊れると酵素の働きで増えていく。
・うま味の相乗効果:異なるうま味成分を合わせると、強さが単独時より増して感じられる現象。
・酵素:特定の反応を進める働きを持つたんぱく質。温度によって働き方が変わる。
・ビタミンD:日光や乾燥で増えることがある成分。きのこに含まれることで知られる。