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本日の日替わりランチは、煮込みハンバーグを主菜に、ほうれん草と人参の白和え、かぼちゃとクリームチーズのサラダを合わせました。
白ご飯、赤だし、大根葉の漬物とともにご用意しています。
煮込みハンバーグは、牛ひき肉、豚ひき肉、玉ねぎ、パン粉、牛乳を合わせたハンバーグを焼き、デミグラスソースで仕立てた一品です。
ソースには、野菜だし、小麦粉、バター、赤ワイン、ケチャップ、ウスターソース、フレッシュトマト、ブイヨン、マッシュルーム、玉ねぎを使っています。
ほうれん草と人参の白和えは、豆腐、ほうれん草、にんじん、干ししいたけ、すりごまを合わせた副菜です。
かぼちゃとクリームチーズのサラダは、かぼちゃとクリームチーズを、マヨネーズ、塩、こしょう、パセリで和えています。
焼いてから煮込む料理、豆腐で和える料理、かぼちゃを乳製品と合わせる料理。
調理法が変わると、食材の水分、脂質、香り、口当たりの出方も変わります。
本日も、かに久の日替わりランチを通して、和食の中の小さな食材学をお楽しみください。
煮込みハンバーグ
ほうれん草と人参の白和え
かぼちゃとクリームチーズのサラダ
白ご飯
赤だし
大根葉の漬物
食品成分の数値は、文部科学省「食品成分データベース」を参考にしています。
いずれも可食部100gあたりの値で、実際の一食分の栄養量とは異なります。
| 食材 | 成分表での食品名・条件 | 主な成分例 |
|---|---|---|
| 牛ひき肉 | うし/ひき肉/生 | 水分61.4g、たんぱく質17.1g、脂質21.1g、鉄2.4mg、亜鉛5.2mg |
| 豚ひき肉 | ぶた/ひき肉/生 | 水分64.8g、たんぱく質17.7g、脂質17.2g |
| 木綿豆腐 | だいず/木綿豆腐 | 水分85.9g、たんぱく質7.0g、脂質4.9g、カルシウム93mg |
| ほうれん草 | ほうれんそう/葉/通年平均/生 | 水分92.4g、たんぱく質2.2g、食物繊維総量2.8g、カリウム690mg、β-カロテン当量4200μg |
| にんじん | にんじん/根/皮なし/生 | 水分89.6g、食物繊維総量2.8g、カリウム300mg、β-カロテン当量7600μg |
| 西洋かぼちゃ | 西洋かぼちゃ/果実/生 | 水分76.2g、炭水化物20.6g、食物繊維総量3.5g、β-カロテン当量2600μg、ビタミンC 43mg |
| クリームチーズ | ナチュラルチーズ/クリーム | 水分55.5g、たんぱく質8.2g、脂質33.0g、カルシウム70mg |
牛ひき肉と豚ひき肉は、たんぱく質と脂質を含む食材です。
ハンバーグにすると、肉のたんぱく質、玉ねぎの水分、パン粉と牛乳のつなぎが合わさり、焼き目と煮込みの両方で表情が変わります。
白和えに使う木綿豆腐は、水分を多く含みながら、たんぱく質や脂質も含む大豆加工品です。
ほうれん草やにんじん、干ししいたけ、すりごまと合わせることで、青み、甘み、香り、和え衣のなめらかさが重なります。
かぼちゃは炭水化物やβ-カロテンを含む野菜です。
クリームチーズと合わせることで、かぼちゃのほくっとした質感に、乳製品らしい脂質のまろやかさが加わります。
煮込みハンバーグで見る、焼き目とソースの二段階の変化
煮込みハンバーグで掘り下げたいのは、「焼く」と「煮込む」という二段階の調理です。
ハンバーグは、ひき肉をまとめて焼く料理です。
けれど煮込みハンバーグになると、そこにもうひとつ、ソースの中で味をなじませる時間が加わります。
表面を焼いて香ばしさを作り、そのあとデミグラスソースの中で煮込む。
この順番によって、香り、食感、味のまとまり方が変わります。
今回のハンバーグには、牛ひき肉、豚ひき肉、玉ねぎ、パン粉、牛乳を使っています。
文部科学省「食品成分データベース」によると、「うし/ひき肉/生」の可食部100gあたり、水分61.4g、たんぱく質17.1g、脂質21.1gとされています。
また、「ぶた/ひき肉/生」の可食部100gあたり、水分64.8g、たんぱく質17.7g、脂質17.2gとされています。
牛ひき肉と豚ひき肉は、どちらもたんぱく質と脂質を含む食材ですが、料理の中での印象は少し違います。
牛肉は香りやうま味の輪郭を作りやすく、豚肉は脂質のなじみやすさや口当たりに一役買います。
二つを合わせることで、ひとつの肉だけでは出しにくい厚みが生まれます。
ひき肉料理の面白さは、肉の繊維を一度細かくしてから、もう一度まとめ直すところにあります。
ステーキや焼き肉のように、もともとの肉の形をそのまま焼く料理とは違います。
ひき肉、玉ねぎ、パン粉、牛乳、調味料を混ぜることで、新しい形の「肉の生地」ができます。
ここで静かに働いているのが、肉のたんぱく質です。
ひき肉に塩を加えてよく練ると、肉のたんぱく質の一部が引き出され、生地にねばりが出てきます。
このねばりが、ばらばらだったひき肉を内側からつなぐ糊のような役割を持ちます。
肉をただ集めただけでは、こうはまとまりません。
練るというひと手間が、ひき肉を「生地」へ変えていきます。
ここで大切になるのが、パン粉と牛乳です。
パン粉は水分を受け止め、牛乳は生地にしっとりした質感を加えます。
肉だけをぎゅっと固めると、火が入ったときに締まりすぎることがあります。
そこへパン粉と牛乳が入ることで、肉の間にやわらかな余白ができ、食感が重くなりすぎないように支えます。
玉ねぎも、ただの香味野菜ではありません。
玉ねぎは水分を多く含み、加熱すると辛味の印象がやわらぎ、甘みを感じやすくなります。
ハンバーグの中に入ることで、肉の香りに丸みを添え、噛んだときの水分感にもつながります。
肉のたんぱく質と脂質だけではなく、野菜の水分もハンバーグの食感を作っています。
焼く段階では、二つの変化が同時に進みます。
ひとつは、表面の香ばしさです。
ひき肉の表面が熱を受けると、糖とアミノ酸が反応するメイラード反応が起こり、焼き色や香ばしい香りが立ち上がります。
もうひとつは、生地の内側で起こるたんぱく質の変化です。
練ることで引き出されたたんぱく質が熱で固まり、生地全体がしっかりまとまっていきます。
この、熱によってたんぱく質の形や性質が変わることを、たんぱく質変性といいます。
ねばりで一度つないだ生地が、焼くことで固まり、崩れにくい一枚の面になる。
この焼き目が、煮込みハンバーグの土台になる部分です。
焼かずにそのまま煮るのとは違い、先に表面を焼くことで、ソースに負けない香りの芯と、煮込んでも崩れない構造の両方ができます。
ただ、煮込みハンバーグは焼き目だけで完結しません。
むしろ面白いのは、その焼き目がソースの中へ入ってからです。
表面にできた香ばしさは、デミグラスソースの水分、酸味、甘み、油脂と触れながら、少しずつ角が取れていきます。
焼きっぱなしの香ばしさとは違い、煮込むことで香りがやわらかくなり、ソースと一体感を持ち始めます。
ソースには、野菜だし、小麦粉、バター、赤ワイン、ケチャップ、ウスターソース、フレッシュトマト、ブイヨン、マッシュルーム、玉ねぎを使っています。
ここにも、食材学の小さな劇場があります。
小麦粉とバターは、ソースにとろみとコクを作る土台になります。
小麦粉は加熱されることで香ばしさを持ち、バターの脂質と合わさることで、ソースに丸みが出ます。
この土台に、赤ワインの香り、ケチャップやフレッシュトマトの酸味、ウスターソースの香辛料感、ブイヨンのうま味が重なります。
トマトの酸味は、肉の脂質とよく合います。
脂質のある料理は、味が重く感じられることがありますが、酸味が入ると輪郭が少し明るくなります。
今回のソースでは、ケチャップの甘酸っぱさとフレッシュトマトの水分感が、デミグラスソースに軽さを添えています。
赤ワインも、煮込み料理らしい香りを作る要素です。
赤ワインには果実味や酸味、渋みの印象があり、肉料理のソースに深さを添えます。
煮込む中でアルコールの角はやわらぎ、ソースの香りの一部としてなじんでいきます。
肉の焼き目、バターの脂質、トマトの酸味、赤ワインの香りが重なることで、煮込みハンバーグらしい濃度が出てきます。
マッシュルームと玉ねぎも、ソースの中では静かな働きをしています。
マッシュルームはきのこらしいうま味と香りを持ち、玉ねぎは甘みと水分を添えます。
どちらも主役の肉を押しのける食材ではありません。
けれど、ソースの中に入ることで、味の奥行きや香りの余白を作ってくれます。
焼き目を作ってからソースに入れることで、煮込みハンバーグには、香ばしさとやわらかななじみの両方が残ります。
表面の焼き色、肉の脂質、玉ねぎの水分、デミグラスソースの酸味とうま味。
それぞれが別々に働きながら、煮込む時間の中で少しずつ近づいていきます。
ここに、ナツメグの香りが加わります。
ナツメグは甘く温かみのある香りを持つ香辛料で、ひき肉料理によく使われます。
強く前に出るというより、肉の香りをまとめ、玉ねぎやソースの甘みとなじみながら、料理全体の輪郭を整えてくれます。
栄養学の面から見ると、牛ひき肉や豚ひき肉は、たんぱく質や脂質を含む食材です。
牛ひき肉には鉄や亜鉛も含まれます。
鉄は赤血球をつくるために必要な栄養素で、亜鉛は味覚や皮膚の健康など、さまざまな体の働きに関わる栄養素です。
こうした成分は、肉を栄養学の面から眺めるときの手がかりになります。
ただ、煮込みハンバーグの面白さは、栄養成分だけで完結しません。
ひき肉を練ってまとめること。
表面を焼いて、香ばしさと崩れない構造を作ること。
ソースの中で煮込み、その焼き目をやわらげること。
それぞれの段階で、水分、脂質、たんぱく質、香り、酸味、うま味が少しずつ形を変えていきます。
煮込みハンバーグは、ひと皿の中に「焼き物」と「煮込み料理」の性格を持っています。
外側には焼き目の記憶があり、内側にはひき肉のやわらかさがあり、まわりにはデミグラスソースの香りがあります。
食材を強く見せるというより、焼き目とソースの間で、少しずつ味を近づけていく料理です。
今日の煮込みハンバーグを、そんなたんぱく質、脂質、焼き目、ソースの重なりとともに楽しんでいただければと思います。
【用語メモ】
・たんぱく質変性:熱などによって、たんぱく質の形や性質が変わることです。練った生地が焼くことで固まり、崩れにくくなる変化にも関わります。
・メイラード反応:糖とアミノ酸が加熱によって反応し、焼き色や香ばしい香りを生む反応です。
・脂質:水に溶けにくく、油になじみやすい成分の総称です。肉やバターの口当たり、香りの余韻にも関わります。
・ブイヨン:肉や野菜などを煮出して作るだしの一種です。ソースにうま味や香りの土台を加えます。

