鱈のトマト煮
小松菜と厚揚げの煮物
鶏ささみの磯部揚げ
白ご飯
赤だし
きゅうりのぬか漬け
| 食材 | 成分・栄養素の手がかり |
|---|
| 鱈 | 脂質が少なくたんぱく質を含む白身魚として知られています。 |
| トマト | うま味成分のグルタミン酸や、色素成分のリコピンを含みます。 |
| 小松菜 | カルシウムや鉄、β-カロテンを含む緑黄色野菜です。 |
| 厚揚げ | 大豆由来のたんぱく質やイソフラボンを含みます。 |
| 鶏ささみ | 脂質が少なく、たんぱく質を多く含む部位として知られています。 |
全体として、脂質ひかえめのたんぱく源が重なる組み合わせです。緑黄色野菜と大豆製品も加わり、彩りと栄養のバランスが取りやすい献立になっています。
鱈のトマト煮に重なる、淡白な白身とグルタミン酸の出会い
鱈はいわゆる低脂質の白身魚で、文部科学省「日本食品標準成分表2020年版」によると、まだら(生)100gあたりの脂質はおよそ0.2g前後と、かなり控えめな数字です。あっさりしているぶん、合わせる食材の個性をよく受け止めてくれる、懐の広い魚とも言えます。
そこで登場するのがトマト。トマトにはうま味成分のグルタミン酸が多く含まれていて、昆布だしに通じる系統のうま味を持っています。鱈自体にはイノシン酸系のうま味もあるので、グルタミン酸とイノシン酸が出会うと、うま味が互いを押し上げる「うま味の相乗効果」が起こりやすくなります。これは1960年代に日本の研究者たちによって整理が進んだ考え方で、だし文化の裏側でずっと働いてきた仕組みです。トマト煮が妙に満足感のある味に仕上がるのは、この重なりが一役買っています。
さらに、トマトを煮込むと、生のときとは香りの表情が変わってきます。加熱でトマトの細胞がほどけ、糖とアミノ酸がじわじわ反応するメイラード反応も少しずつ進み、甘みと香ばしさがふくらみます。砂糖とコンソメを合わせることで、酸味の角がやわらぎ、鱈の淡白さにちょうどよい輪郭を添えてくれます。
トマトの赤い色素リコピンは、実は加熱して油となじませたほうが体に取り込まれやすくなると研究されています。生のサラダよりも、煮込みやオイル調理のほうがリコピンの吸収率が上がるという報告があり、トマト煮はその意味でなかなか理にかなった食べ方なんです。鱈のトマト煮、見た目は素朴ですが、栄養の受け渡しという点では静かに優秀な一皿だったりします。
鱈という字は「魚へんに雪」と書きますが、これは雪の降る寒い季節に旬を迎えるからとも言われています。名前からして冬支度の魚なのに、トマトとオレガノをまとった瞬間、どことなく地中海の陽気な空気をまとってしまう——この変わり身の早さ、白身魚界でもなかなかの器用さではないでしょうか。
【用語メモ】
・グルタミン酸:昆布やトマトなどに多いうま味成分のひとつ。
・イノシン酸:かつお節や魚肉などに含まれるうま味成分。
・うま味の相乗効果:異なる種類のうま味成分が重なると、うま味を強く感じやすくなる現象。
・メイラード反応:糖とアミノ酸が加熱で反応し、焼き色や香ばしい香りを生む反応。
・リコピン:トマトなどに含まれる赤い色素成分。