鮭の塩焼き
とり天
豆苗のおひたし
白ご飯
赤だし
きゅうりのぬか漬け
| 食材 | 成分・栄養素の手がかり |
|---|
| 鮭 | たんぱく質、脂質(EPA・DHAなどの脂肪酸)を含みます |
| 鶏むね肉 | たんぱく質を多く含み、脂質が少ないことで知られています |
| 大葉 | 香り成分や、β-カロテンなどを含みます |
| 豆苗 | ビタミンK、葉酸、β-カロテンなどを含む緑黄色野菜です |
| 胡麻 | 脂質、ミネラル、香ばしさのもとになる成分を含みます |
全体として、たんぱく質を軸にしつつ、緑の野菜や発酵由来のぬか漬けが加わる組み合わせになっています。
とり天の下味に隠れた、砂糖と塩の「水分をあやつる」仕事
とり天と聞くと、まず衣のサクサク感に目がいきますよね。でも今日こっそり注目したいのは、揚げる前の下味の段階です。鶏むね肉には塩、酒、そして砂糖を使っています。この砂糖、甘みづけというより、じつは水分の交通整理をしてくれる立役者なんです。
鶏むね肉はもともと脂質が少なく、たんぱく質がぎゅっと詰まった部位です。文部科学省「日本食品標準成分表2020年版」でも、若鶏むね肉(皮なし・生)100gあたりのたんぱく質は約23.3g、脂質は約1.9gと記載されていて、脂の少なさがよく分かります。ただ、脂が少ないぶん加熱すると水分が抜けてパサつきやすい、という一面もあります。
そこで砂糖の出番です。砂糖には水を抱え込む性質(保水)があり、下味に少し加えておくと、肉の中の水分がキープされやすくなります。塩のほうは、浸透圧の働きで肉の表面から少しずつ内側へなじみ、たんぱく質の状態を変えて水分を受け止めやすくします。塩は水を出す方向、砂糖は水を保つ方向――方向のちがう二人がタッグを組むことで、加熱後もしっとりした食感に仕上がる、という段取りなんですね。
「肉に砂糖をもみ込む」と聞くと甘くならないか心配になりますが、使う量はごくわずかで、揚がった頃には甘みとしてはほとんど主張しません。いわば裏方に徹する仕事人。表舞台の衣にスポットが当たっている間、下味の砂糖は静かに肉の水分を守り続けている、けなげなポジションなのです。
とり天は大分県の郷土料理で、ニンニクを効かせた衣で下味をつけ、塩でシンプルにいただくのが伝統的なスタイルとして知られています。似た料理に唐揚げがありますが、唐揚げが片栗粉や小麦粉をまぶして「揚げ焼き」に近い衣感になるのに対し、とり天は天ぷらの衣をくぐらせるため、ふわりと軽い口当たりになります。同じ揚げ鶏でも、衣のつくり方ひとつで食感の性格がずいぶん変わるわけです。
揚げる瞬間には、衣の表面で水分が一気に蒸発し、小麦粉のでんぷんが糊化してから固まっていきます。この乾いていく過程が、あのサクッとした軽さの正体です。中の鶏肉は下味の砂糖と塩に守られてしっとり、外はでんぷんの変化で軽く――口の中で二つの食感が出会うのが、とり天のいちばんの見どころだと思います。今日は大葉の香りも重ねているので、揚げたての香りにもぜひ注目してみてください。
【用語メモ】
・浸透圧:濃さのちがう液体が接したとき、水分が濃いほうへ移動しようとする力のこと。
・たんぱく質変性:熱や塩などによって、たんぱく質の形や性質が変わること。
・でんぷんの糊化:でんぷんが水と熱で状態を変え、粘りやとろみ、食感を生む変化のこと。