キャベツコロッケ
鰆の塩焼き
小松菜のからし和え
白ご飯
赤だし
きゅうりのぬか漬け
| 食材 | 成分・栄養素の手がかり |
|---|
| キャベツ | ビタミンC、ビタミンU(キャベジン様成分)、食物繊維 加熱で量感が変わり、甘みが出やすい野菜です |
| 鰆 | たんぱく質、脂質(DHA・EPAなどの脂肪酸)、ビタミンD 白身に近い見た目ですが、魚らしい脂を含みます |
| 小松菜 | カルシウム、鉄、β-カロテン、ビタミンC 緑黄色野菜として知られる青菜です |
| 牛乳・バター | たんぱく質、脂質、カルシウム コロッケのコクとなめらかさの背景にあります |
効能を保証するものではありませんが、それぞれ体づくりに関わる栄養素として知られています。
キャベツコロッケが甘くなる理由と、鰆という名前に隠れた季節のねじれ
まずキャベツの話から。生でかじると青くさく、ほのかな辛みすら感じるのに、じっくり炒めると驚くほど甘くなります。あの変化の背景には、いくつかの成分の動きが重なっています。ひとつは加熱で細胞がやわらかくなり、内側の糖が舌に届きやすくなること。キャベツはもともとブドウ糖や果糖といった糖をそれなりに含んでいて、水分が飛ぶほど甘さが凝縮されていきます。
もうひとつ、青くささや辛みのもとになっているのが、イソチオシアネートと呼ばれる香り成分の仲間です。キャベツを刻んだり噛んだりすると、酵素が働いてこれらの成分が生まれます。ところが加熱するとこの酵素の働きが穏やかになり、辛み系の香りが立ちにくくなります。つまり炒めたキャベツが甘く感じるのは、「甘みが増える」と「刺激が引く」が同時に起きているからなんですね。今回のコロッケは、その炒めた甘みを牛乳とバターのコクで包み、ナツメグでほんのり香りを添えています。ナツメグと乳製品の相性が良いのは、洋食の下ごしらえで昔から重ねられてきた組み合わせでもあります。
キャベツから見つかった胃の調子に関わる成分は、かつて「ビタミンU」と名付けられました。でも実はこれ、正式なビタミンではありません。発見当初にビタミンの一種と考えられて命名され、その名残で今も「U」の呼び名が残っている、いわば由緒ある勘違いのような存在です。名前だけ聞くと立派なのに、栄養学の分類上は少し肩身が狭い、そんな成分です。
次は副菜の鰆について。魚魚へんに春と書くので春の魚のイメージが強いのですが、地域によっては脂がのる冬から水揚げが盛んになることもあり、旬の感覚が土地でずいぶん違います。名前は「春を告げる魚」の顔をしているのに、脂の乗り具合で言えば別の季節に本気を出すこともある、なかなかつかみどころのない魚なのです。鰆は成長すると1メートルを超えることもあり、白身のように淡く見えて、実際にはDHAやEPAといった脂肪酸を含む脂を持っています。だからこそ塩焼きにすると、皮目の香ばしさと身の淡さのあいだに、ほどよい脂のふくらみが顔を出します。酒と塩だけのシンプルな味付けは、その繊細な脂と風味を邪魔しないための選択です。
味や香りとは別の角度から見ても、この一皿は面白い並びになっています。炒めて甘くなったキャベツ、脂を含む白身の鰆、辛みを効かせた小松菜。甘み・脂・辛みが少しずつ役割を分け合い、赤だしのうま味が全体の輪郭を添えてくれます。
【用語メモ】
・酵素反応:食材の中の酵素が、成分を別の物質へ変えるはたらき。刻む・噛むなどで進みやすくなります。
・イソチオシアネート:アブラナ科の野菜に含まれる香り・辛み成分の仲間。加熱で印象が変わります。
・DHA・EPA:魚の脂に含まれる脂肪酸。栄養学の分野でも注目される成分です。