鉄火丼
おから煮
茄子とピーマンの生姜炒め
赤だし
きゅうりのぬか漬け
| 食材 | 成分・栄養素の手がかり |
|---|
| マグロ(赤身) | たんぱく質を多く含み、鉄も含む食材として知られています |
| おから | 食物繊維やたんぱく質を含み、大豆由来の成分が残ります |
| 茄子 | 水分が多く、皮に色素成分を含みます |
| ピーマン | ビタミンCを含む野菜として知られています |
| 生姜 | 独特の香り成分と辛味成分を持ちます |
赤だしの発酵由来のうま味や、ぬか漬けのさっぱりとした酸味も、献立全体の味の輪郭を整えています。
鉄火丼の赤身に見る、色の正体とうま味成分の話
鉄火丼の主役はマグロの赤身。あの深い赤色、実は血の色というより「ミオグロビン」という色素タンパク質の色なんです。筋肉の中で酸素を受け止める役割を担っていて、長く泳ぎ続けるマグロほど多く含まれる傾向があります。回遊魚らしい、いわば持久力の証のような成分ですね。
このミオグロビンには鉄が含まれていて、マグロの赤身が鉄を含む食材として知られているのは、この色素が背景にあります。文部科学省「日本食品標準成分表2020年版」では、くろまぐろ(天然・赤身・生)100gあたりで鉄が約1.1mg、たんぱく質が約26.4gと記載されています。今回のキハダやトンボシビは種類が違うので数値はそのまま当てはまりませんが、赤身がしっかりしたたんぱく源であることは共通しています。
面白いのは、この色が時間とともに変わっていくところ。水揚げ後、鮮やかな赤だったミオグロビンは酸素に触れて少しずつ「メトミオグロビン」へと形を変え、褐色っぽくくすんでいきます。お店で切りたての赤身がきれいなのは、まさにこの変化が進む前の状態というわけです。
そしてうま味の面では、マグロにはイノシン酸といううま味成分が含まれます。これは時間の経過とともに増えていく成分で、獲れたてよりも適度に置いたほうがうま味を感じやすい、という職人の感覚には、ちゃんと化学的な裏付けがあるんですね。ネギトロにするとねっとりした口当たりに変わるのも、細かくすることで脂と身がなじむから。同じ一匹の魚でも、赤身とネギトロで表情ががらりと変わります。
マグロの「トロ」と「赤身」の違いは脂の量ですが、同じ個体でも季節や回遊ルートによって脂ののり方が変わります。つまり「今年のあの海域のマグロは当たり」みたいな話が生まれるのは、魚が自分の都合で太ったり痩せたりしているから。人間の食卓の都合など知る由もなく、ただ泳いでいるだけなのに評価される――マグロ本人がいちばん驚いているかもしれません。
味や香り、色、そして食感。マグロという身近な魚も、成分の目で眺めると意外な奥行きが見えてきます。今日の鉄火丼を口にする時、あの赤色の正体を少し思い出してもらえたら嬉しいです。
【用語メモ】
・ミオグロビン:筋肉で酸素を受け止める色素タンパク質。赤身の色のもとになります。
・メトミオグロビン:ミオグロビンが酸素に触れて変化した状態。褐色っぽく見えます。
・イノシン酸:魚や肉に含まれるうま味成分のひとつ。
・たんぱく質:筋肉などを形づくる主要な成分。